ヤマネムリバナ(山眠り花)

 

 

 

 

輝くときを過ぎ

山にセピア色の風が吹きはじめても

眠らなければならない動物たちは

そわそわと落ち着きがない

 

それでも

季節には季節の約束があって

決められたように花は咲く

その花の香りがゆるゆると

山を覆いつくすころ

 

ようやく

次の季節までの

僅かな休息が訪れる

 

 

 

 

 

 

©江本あきこ/詩集『いのちのひかり』